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東京オリンピックエンブレム問題に制作者がコメントーー弁護士、研究者の見解は?

 

ベルギーのStudio Debieが公開したエンブレムとの比較画像

報道されている海外作品についてはまったく知らないものです。制作時に参考にしたことはありません。この東京2020エンブレムは、1964年の作品へのリスペクトを持ちながら、日本らしさを自分のなかで追求してデザインしました。海外出張中のため、コメントを出すことが遅れてしまい申し訳ありませんでした。帰国後、皆様にご説明できる場を設定させていただきたいと考えております。

ベルギーのデザイナーが盗作の疑いがあると主張した、2020年東京オリンピックの公式エンブレムをめぐり、制作者の佐野研二郎氏は7月31日、これらの作品について疑惑を否定。佐野氏は現在海外に滞在中で、帰国後に会見して見解を表明する予定だという。

今回の問題に対しては、複数の専門家が取材を受けるなどして、コメントを出している。

このロゴとエンブレムにおける商標権の問題について、骨董通り法律事務所の福井健策弁護士は、7月30日のNHKニュースの中で、「『TOKYO2020』という文字や、オリンピックのマークもセットで使われているので、これを見て東京オリンピックのマークだと思う人はいても、似ていると指摘されている劇場のマークと混同する人が出ることは考えにくく、商標権の侵害にあたる可能性は低い」との見解を示した。

また、著作権について考えてみると、文字のデザインであるロゴや書体は、そもそも著作物性が原則として否定されている。例外的に、「ロゴのデザイン的要素が、見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りる程の美的創作性を備えている」場合であれば著作物性が認められるというが、いまだにこれを認めたものは存在していない。

もし今回の劇場のロゴに著作物性が認められたとしても、これは「T」というアルファベットをベースにしたデザインである。こうしたありふれたものをモチーフにしたデザインであれば、その著作権法上の保護の範囲は極めて限定的なものになるだろう。

7月31日放送の「ひるおび!」(TBS)の中で、八代英輝弁護士は、「ベルギーの劇場のロゴは、図案集にも載っているようなシンプルなものなんですよ。ですから、それ自体が著作物として保護されるということになってしまったら、デザインなんかできなくなってしまう」と述べ、ベルギーのデザイナーの主張は一種の「炎上商法」ではないかとまで指摘する。

研究者の意見はどうだろうか。神戸大学大学院法学研究科の島並良教授(知的財産法)はTwitterで、「今回の2020年エンブレムは、ベルギーの劇場ロゴと比べると、(1)配色が異なり、また(2)右上の日の丸の有無も異なる(さらに細かく言えば、(3)左上・右下の両突起と中心の縦棒が接しているかどうかも異なる)。こうした違い、特に(2)の点をどう捉えるかによって、結論は分かれそうだ」と二つのロゴの相違点を詳細に分析する。

「類似性要件が争われる多くのケースと同様に、断定的なことは言えないが、私自身は、右上に付加された日の丸のインパクトに鑑みると、限られた選択肢の中で充分に表現は変容されており、(ネット上で騒がれているほどには)著作権侵害が明らかなケースではないように思う」という見解を述べている。

騒動になった後、佐野氏の事務所のTwitterが非公開状態となり、Facebookページも削除されていたため、盗作を自覚していたのではないかと言った噂が流れた。しかし、その後、佐野氏の事務所はFacebookとTwitterアカウントは5月に閉鎖したと発表しており、関係なかったようだ。

専門家で、今回のエンブレムについて、商標権、著作権の問題があると指摘した人は、今のところ見当たらない。

「似ている」というイメージだけで、「盗作」だと騒いでしまいがちだが、ありふれたデザインが保護される範囲は、世間で考えられているほど広くはない。冷静に考えたいところだ。


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