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武藤貴也議員の発言と「個人の尊重」を否定する憲法改正草案13条との関係

 

武藤議員のHPより

武藤議員のHPより

自民党の武藤貴也衆院議員が、7月30日に自身のTwitterで、「SEALDsという学生集団が自由と民主主義のために行動すると言って、国会前でマイクを持ち演説をしてるが、彼ら彼女らの主張は『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考えに基づく。利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に残念だ」と発言したことが、激しい非難を浴びている。

文字通り発言をとらえると、「戦争に行く覚悟があります」と答える人が自己中でない利他的な人間であるという趣旨だと考えられるので、批判されるのは当たり前で、完全に失言といえる。党としても「徴兵制はありえない」と度々強調していることからも、なにも自民党だってここまで考えているわけではないだろう。

ただ、自民党憲法改正草案を読んでみると、今回の武藤議員の考え方と根底がつながっていることがあることが分かる。それは「個人の尊厳」という原理に対する否定的な価値観だ。

 

現行 日本国憲法 第13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

自民党 改憲草案 第13条

全て国民は、として尊重される。生命、自由及び幸福追求の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

このように、「個」という言葉がいつの間にか消されている。一般の人が見ると違いがよく分からないかもしれないが、「個人」と「人」では全く違う概念になってしまうだろう。

「個人の尊重」は、多様な生き方、考え方をする個々の人間の存在を当然のこととして、国民に単一の価値観を強制しないという考え方である。

しかし、「人」というのは抽象化された危険な言葉だ。例えば、「人としてありえない」と言った発言には「人は本来こうあるべき、あって当たり前」という価値判断が内在している。

「個人」が全面に出てくることを嫌うーー。自民党憲法改正草案を見ると、決して武藤議員だけが特殊な考え方というわけではなさそうだ。

武藤議員は、「真の平和主義」の重要性を主張しているが、少なくとも、「戦争に行きたくない」という価値判断については理解を示しつつも、国際安全保障の現実についてきちんと説明するというスタンスを取るべきだったのではないか。これを「極端な」利己主義だとバッサリ切り捨ててしまうのは、一般人が言うのであればともかく、政権与党の議員としてはあまりにも「利己的」なものであると感じる。


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