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旧司法試験の口述式には、試験委員が求める思考が詰まっている

 

 

imageもはや遠い過去の話だが、予備試験と同様、旧司法試験では論文式試験の次に、口述式試験が存在していた。基本的に、科目は憲法・民法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の五つ。行政法と商法は存在しない。択一、論文といったペーパーテストでは計ることのできなかった力を最後に確認する場となっており、合格率は90%近くと、かなり高かった。

結局、試験を通して聞きたいことは、旧司法試験も現在の司法試験も大きくは変わっていない。論文式試験とは違い、試験委員と受験生が直接議論するこの機会は、司法試験で求められている思考が瞬間のやり取りで明らかにされており、今でも参考になることが多いだろう。

以下では、憲法でのやり取りを再現した。弁護士会が問題になっており、テーマとしてもホットだ。

強制加入団体と構成員の思想良心の自由をめぐる問題
(弁護士会による法案反対活動の可否)

【主査】弁護士として働くには必ず弁護士会に登録しなければならないのですか、これは許されますか。

【受験生】はい。弁護士は法律の専門家としての信頼が求められますから、勝手に活動したり、人によって大きく報酬が異なっていたりすると困るので、会を作って統制する必要があり、許されると思います。

【主査】でもね、あまり能力のない弁護士がいた場合、自由競争にして自然淘汰されていったほうが、質の高い弁護士が残って国民のためになるんじゃないですか?

【受験生】確かに、能力のない弁護士本人が淘汰されていく分には構わないのですが、一般市民にはどの弁護士がよいか分かりませんし、国選弁護人など弁護士を選べない場合もありますから、やはり、弁護士全体への信用性を確保するためにも弁護士会は必要だと考えます。

【主査】では弁護士会がある法案に反対する旨の決議をすることは許されますか?

【受験生】えー、決議をするだけであれば、何ら負担を課さないので、許されると思います。

【主査】でもね、決議するためにはそのための費用を使ってますから、負担はあるといえませんか。

【受験生】確かに費用はかかっていますが、おそらく一般会費から使用していると思うので、あらかじめ包括的に支払っていて、新たに特別費として負担させるわけではないため、許されると思います。

【主査】でもね、一般会費というのはあくまで弁護士会としての本来的活動に使うことが予定されていて、だからこそ支払っているのではないですか?

【受験生】えー…(どうしよう、確かにそうだ。撤回すべきか…。)そうですね。確かに、えー…。確かにその通りだと思いますので、許されないと思います。

【主査】そうすると、先ほどのあなたの答えと異なりますが。

【受験生】はい。申し訳ありません。撤回します。

【主査】そうですか、では、法案の内容が人権侵害も甚だしいものであったとしても、反対決議はできないということになりますね。

【受験生】(ええー?こりゃ間違ったかな…)はい。確かにそうなりそうですが、客観的に明らかに人権侵害となる内容の場合は、弁護士の法の専門家としての立場から、反対決議ができると思います。

【主査】ということは、法律の内容によって、できたりできなかったり変わってくるということですね。

【受験生】(まずい…。でももう一回撤回するわけにはいかない…。)はい。そう考えます。

【主査】分かりました。私からは以上です。

 

 

受験生は、勉強してきた抽象的な理屈でなんとかしのごうとするが、主査は具体的に掘り下げていき、逃げ道をつぶしていることが分かるだろう。


「一般会費は、あくまで弁護士会としての本来的活動に使うことが予定されている」と突っ込んだり、「法案の内容が人権侵害も甚だしいものであった場合でも」と具体的事例を変えることによって利益衡量のバランスがどう変化するかを問うているのだ。

受験生は、相手の誘導に乗り過ぎ

弁護士会の目的は、人権保障や社会正義の実現にある。個別具体的に考えて、この目的に沿った形での反対活動は許される、ということが一応想定されていた答えだったのではないかと思われる。

団体の目的・性質、人権の性質や制限の程度などを考慮要素として、バランスよく利益関係に配慮できる思考を示すことが重要だった。この受験生は、主査の誘導に安易に乗りすぎてしまい、一貫した思考が示せていたかは少し疑問だろう。

「論理的一貫性」という言葉は、現在の司法試験の出題趣旨でもよく出てくる言葉だが、旧試験の頃から常に問われ続けてきたコアの部分なのである。


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